イタリアのおじさんと私

土曜日、近所のデパートでイタリア展をやっていたのでひやかしに行った。
ハムを切っていたイタリア人発見！
不器用な手つきでハムを切ってやがる。
でも、切られたハムは見事としかいいようのない美しさ。
イタリア人、恐るべし。

黙ってずーっと見てるのもなんなので、思い切ってイタリア語で話しかけてみる。
気難しそうなオヤジなのに、ペラペラと返事が返ってきた。勿論イタリア語で。
気をよくして、オヤジの仕事を邪魔しつつ話し込む。
気がついたらハムを買っていた。

家人にとって、このハムは凄くうまかったらしい。
何せ、翌日、行こうかと言い出したくらいだもの。
が、我が家は緊縮財政中。自粛しなくては。
何て言ってたのだが、イタリア展最終日の本日、終了間際にかけこんだ。
ハムだけじゃなく、ピクルスも買いたかったんだもん。

例のオヤジを発見。
寄って行くと、どうやら私のことを覚えていたらしく、イタリア語で話しかけてくる。
家人の感激の言葉を伝えると、超笑顔。
あんた、先日の気難しい顔はどうしたんだってくらいの笑顔だ。
で、今日もオヤジに言われるままに、ハムを買って帰ったのであった。


以下、オヤジと私の会話。ちょっと長いです。
興味のある方だけどうぞ。

＜土曜日＞　

オヤジ「やぁ」
私「こんにちは
　　何か買いたいのだけど、何がおススメですか」
オ「そりゃもう、全部だよ
　　うちで作ってんだ　どれも味は確かだよ」
私「私は肉は食べられれません　アレルギーだから
　　ごめんなさい」
オヤジあからさまにムッとする

私「でも、家人は肉が大好き　です
　　だから、一番美味しいのを買って帰りたいのです」
オヤジ、満面の笑みを浮かべる。分かりやすすぎだぜ。

私「あなたはこの中で何が好きですか？」
オ「どれもウマイけど、この脂身は最高さ
　　スパゲッティやリゾットの上に乗せて溶かして食ったらご機嫌さ
　　それに、切ったはしから劣化するから、なかなかお目にかかれない代物だ
　　だけど、大丈夫　すぐに真空パックにしたからね
　　冷蔵庫で１ヶ月は軽く持つよ」
私が買うのもと決めて、薄切り脂身のパックを持たせる。
まるで、買わなければ人間じゃないとでも言うような、身振り手振りだ。

私「だけど、カロリーが・・・」
オ「この脂身は特別なんだ
　　重くないんだ　軽い油なんだ　いくらでも食べられるぜ
　　ほら、ためしに食ってみな」
と、私に脂身の薄切りをよこす
私「だから、肉は食べられないのです・・・」
オ「なんでこれが食えないんだ」
私「アレルギーなのです　ごめんなさい」
オ「そうだったな・・・
　　ともかく、うまいんだ　これにしろ」
ってわけで、脂身の３枚切りパックをを買うことになった

オ「何だ、脂身はひとつでいいのか？
　　じゃあ、この生ハムはどうだ？
　　うちのハムはうまいぜ
　　脂身も確かにうまいけど　このハムもうまい
　　何しろ、そのまま食べられるからな」
私「そのまま食べたらいいのですか？」
オ「もちろんだ」
で、生ハムパックも買うことになった。

会計時、イタリア語ペラペラの日本の兄ちゃんが
「この脂身は、一枚を半分に切って、パスタとかリゾットに乗せると美味しいですよ」
と、言っているのに、横でオヤジは
「いいか、１枚をたっぷり乗せるんだ　その方がうまいからな」
と、釘をさす。流石だオヤジ。直感で日本語も分かるのか？！

夕食時、パスタ（アーリオオーリオにパルミジャーを混ぜたシンプルなやつ）の上に
贅沢にも脂身を一枚乗せる。
実は、この日は昼も同じメニューだった・・・。
でも、せっかく脂身があるので作ってみたのだ。
家人の反応は上々、というか、こんなウマイものは初めて食べた。というお褒めの言葉を頂く。
昼間とほぼ同じなのに、まったく別の食い物だったらしい。恐るべし、脂身。
一緒に買って帰った生ハムも凄くうまかったらしい。
ＶＩＶＡ！高カロリー。


＜今日＞
オ「やあ」
私「こんにちは」
オヤジ、今日は最初から笑顔だ

私「この前、かって帰った・・ええっと・・・（脂身って単語が出てこない）」
オ「チーズか？
　　あ、脂身だ、脂身だな」
私「そう、それです。
　　脂身と生ハムを買って帰りました　　
　　家人が食べて、すごく美味しいと言っていました　おめでとう※」
オ「そうだろう」
もう、これ以上はないっていう笑顔。

私「それで、今日も何かを買って帰りたいのですが、おススメは何ですか？」
オ「この前は脂身と生ハムを買って帰ったんだったな
　　切ったままのパックは、もってせいぜい３日だ
　　そうだ、真空パックの○○（何ていったか分からない）にしろ　
　　これなら冷蔵庫で１ヶ月はもつ
　　もちろん、味も最高だ」
私「じゃあ、それ頂戴」

ところが、商品が店頭に並んでいない。
奥の冷蔵庫に入っているらしく、日本人の兄ちゃんに出させる。
兄「これはいくらで売るのですか？」
オ「○○円だ」
兄「え？」
オ「○○円でいい」
どうも、別にとってあった物のようだ。しかも、ちょっと安いらしい。
お言葉に甘えて、２パック買う。
更に安くなる。ありがとう、オヤジ。

オ「そのまま食べてももちろんうまい
　　が、ルッコラをそえてレモンをしぼるともっとうまい
　　パンがあれば最高だ
　　でも、日本のパンじゃだめなんだ」
私「そうね、確かにパンの種類は違いますね」
オ「まあ、とにかく、そのままでも十分うまいからな」

ってわけで、今日買ったのが、画像のものである。
オヤジの言うように、ルッコラとレモンと一緒に食卓に出そうと思うのだが、
果たして本当にうまいのだろうか。
私は食べないだけに、ちょっと心配。


※この「おめでとう」という単語、日本語に訳すとちょっと変な感じ。
　レストランなどで、美味しいものを食べたときに、美味しいの他に
　賞賛の言葉として使ったりする。